普段と変わらない暮らしをしているのに、突然水道水や排水溝・床下から灯油の臭いがするのは、非常に不安を呼び起されるものです。
そのような状況が発生する原因と適切な対応方法について詳しく解説します。建物の種類や状況に応じた対処法をご紹介するため、万が一の事態に備えてぜひ参考にしてください。
目次
灯油の臭いがする原因【状況別】
灯油の臭いが感じられる原因は、建物の種類や構造によって異なります。主な原因として以下が考えられます。
一戸建ての場合

一戸建ての場合は下記のような事象が考えられます。
灯油タンクや配管の劣化による漏れ
- タンクの劣化
- 配管の問題
屋外に置かれた灯油タンクは、長年の使用や気象条件により劣化することがあります。特に、金属製のタンクは錆びやすく、小さな穴が開くことがあります。また、タンクからストーブまでの配管も、経年劣化や凍結などにより損傷する可能性があります。継ぎ目の緩みや亀裂が原因で、少しずつ灯油が漏れ出すことがあるのです。
給油時のこぼれや不適切な取り扱い
- 給油時の事故
- ポリタンクの転倒
タンクに給油する際、不注意でノズルを外してしまったり、量を誤って溢れさせたりすることがあります。また小型のポリタンクを使用している場合には誤って倒してしまい、大量の灯油がこぼれる事故も起こり得ます。
大量の灯油がこぼれてしまった場合には、専門業者や消防などと連携した適切な対応が必須です。灯油が大量に流出してしまったらどうしよう?といったお悩みを持っている方は、下記の記事も併せてご覧ください。
地下水への灯油の混入
- 地中への浸透
- 井戸水への影響
地上でこぼれた灯油が長期間(土質による※火山灰・砂なら即日)かけて地中に浸透し、地下水を汚染することがあります。特に井戸水を使用している家庭では、地下水の汚染が直接水道水に影響を与える可能性が高くなります。環境汚染につながるため危険性があります。
集合住宅の場合

次に、集合住宅の場合を紹介します。集合住宅では大きく3つの状況によるアクシデントが想定されます。
上階や隣接する部屋での灯油漏れ
- 垂直方向の浸透
- 水平方向の広がり
- 強烈な油臭
上の階で灯油がこぼれた場合、床や壁を通じて下の階に浸透することがあります。隣の部屋での漏れが、共通の壁や床を通して広がることもあるため、この場合は早急な対応とともに住民への注意喚起が求められます。
共用の貯水タンクへの灯油混入
マンションなどの大規模な建物では、共用の貯水タンクが設置されていることがあります。このタンクに何らかの原因で灯油(貯水タンクの通気口に灯油のガスが入る※生の灯油がそのまま貯水タンクに入る事例は構造上ほとんどありません)が混入すると、各住居の蛇口から出る水に灯油臭が混じることがあり、建物全体に影響が及ぶ可能性があります。
建物全体の配管システムの問題
- 複雑な配管網
- 共用部分の漏れ
- 灯油の使用量増加
集合住宅では配管システムが複雑で、一箇所の問題が建物全体に波及することがあります。またエレベーターホールや地下駐車場など、共用部分での灯油の使用や保管が原因で問題が発生することもあります。
水道水から臭う場合

水道水から臭気が漂ってくる場合には、以下のような問題が起こっていることが考えられます。
- 地下水の汚染
- 水道管への浸透
地中に浸透した灯油が地下水脈に到達すると、井戸水や地下水を水源とする地域全体に影響を及ぼす可能性があります。汚染された土壌付近に水道管が埋設されている場合、土中の灯油が古い水道管や継ぎ目の緩んだ箇所から浸透し、水道水を汚染することもあります。水道管はほとんどポリエチレン管で耐油性能がなく、灯油が浸食してしまいます。
排水溝から臭う場合

排水溝から臭いがするという場合は、故意であるかどうかは関係なく、不適切な処理方法による以下のような問題が起きている証拠です。
- 不適切な廃棄
- 大量のこぼれ
- 蒸気の逆流
使用済みの灯油を誤って排水溝に流してしまっていないでしょうか。少量であっても強い臭いの原因となります。また自分のせいではなくても灯油の大量流出事故が起きた場合、その一部が排水システムに流れ込んでいる可能性があります。排水管内で気化した灯油の蒸気が、排水溝から室内に逆流することで臭いを感じることもあります。汚染された土壌付近に下水管が存在すれば土中の灯油が継ぎ目等から浸透し、臭気が発生する場合があります。
床下から臭う場合

床下から臭気がくる場合、以下のような問題が起こっていると考えられるでしょう。
- タンク下部からの漏れ
- 配管の損傷
- 基礎部分の浸透
屋外に設置された灯油タンクの底部に小さな穴が開いた場合、気づかないうちに床下に灯油が浸透していることがあります。さらに配管に関しては、床下を通る灯油の配管に亀裂や接続部の緩みがあると、長期間にわたって少しずつ漏れ続けることがあります。
また最悪の場合、建物の周囲でこぼれた灯油が、基礎部分を通じて床下に全面的に浸透することもあります。この場合は建物自体に影響を及ぼしてしまっているので、早急な専門家の対処が必要となります。

灯油の臭いがしたときにすぐに取るべき対処法
少しでも灯油の臭いが鼻をかすめたら、そのまま放置は絶対にやってはいけません。以下では居住者、あるいは建物管理者の2視点に分けて覚えておくべきポイントを解説します。
居住者の場合

自宅内で灯油ストーブを利用している場合は、ストーブやポリタンクの確認をして臭いが発生していないかを確認してください。もし利用していない場合は、壁の中の灯油配管の問題、あるいは他の居住者が室内で灯油ストーブなどを利用し、その周辺で漏れている可能性あるため、部屋から出て近隣住民や大家さんに確認しましょう。
このように、自宅内で灯油を利用していない場合は、建物自体や他の居住者に起因する問題である可能性が高く、その場合は自身でのチェックが難しくなります。まずは大家さんや建物の管理会社への相談が最も良い方法です。
建物管理者の場合

居住者から灯油漏れに関する連絡を受けた場合、迅速かつ適切な対応が求められます。日頃から設備の点検や居住者への注意喚起を行い、万一の事態に備えましょう。もし事態が起きてしまった場合には、以下の順番で対応をしてください。
- 状況確認:まずは、居住者から具体的な状況(臭いの強さ、発生場所、心当たりの有無など)を聞き取りましょう。
- 安全確保:灯油は引火性があるため、状況に応じて居住者に換気や火気使用の停止を促しましょう。
- 発生源特定
居住者宅内:灯油ストーブやポリタンクの保管状況、使用履歴などを確認し、漏れの可能性を検討します。
共用部:貯蔵タンクや配管設備などを点検し、漏れの有無を確認します。 - 専門業者への連絡
軽微な場合: 臭いのみで明らかな漏れがない場合は、換気を促し、状況を見守ることも可能です。
漏れの疑いがある場合: 専門の業者(ガス会社、設備業者、清掃業者など)に連絡し、調査・点検を依頼しましょう。
緊急性が高い場合(大量の灯油漏れ、体調不良者発生など): 消防署への通報も検討しましょう。
緊急時の連絡先として、消防署(119)と契約先のガス会社の電話番号、灯油漏れや清掃に関して信頼できる業者の電話番号を使います。慌てず対処するために、事前にこれらをどこかにメモしておくこともおすすめです。
すぐに消防署が思いつかないときには、インターネットで「消防署 最寄り」などと調べると判明します。
まとめ
灯油の臭いに気づいたら、迅速な対応が重要です。まず換気を行い、火気使用を控えましょう。原因は建物の種類や構造によって異なるため、状況をよく確認します。
一戸建てではタンクや配管の劣化、集合住宅では共用設備の問題も考えられます。自己判断が難しい場合は、躊躇せず専門家や管理者に相談してください。集合住宅では近隣への配慮も忘れずに行いましょう。予防には定期的な点検と適切な取り扱いが欠かせません。
安全な暮らしのため、この知識を活用し、慎重に対応しましょう。