大量でも少量でも、一般道路に灯油をこぼしてしまった方は、少なからず焦りを感じているのではないでしょうか。
人体や環境に有害な影響をもたらす物質を含んだ灯油を漏洩させてしまうと、漏洩させたことへの責務や適切な対処が求められます。誠実な対応が必要ですが、決して焦る必要はありません。
時として専門業者の力を借りながら行う対処法を解説します。
目次
道路に灯油をこぼした際の法的な責務

道路に灯油をこぼしてしまった場合、何もしないままでいると環境汚染や火災の危険性があり、法的責任を問われる可能性があります。
以下に関連する法律と、どのような内容であるかを解説します。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)
廃棄物の処理及び清掃に関する法律とは、廃棄物の適正な処理と生活環境の清潔保持を目的とした法律です。特に第16条と第19条が関係しています。灯油は廃棄物に該当し、不法に投棄することは禁止されています。道路に灯油をこぼした場合、速やかに回収・処理する義務が生じるのです。
消防法
消防法は、火災を予防・警戒・消火し、国民の生命と身体及び財産を火災から保護することを目的とした法律です。製造所、貯蔵所または取扱所を主な対象としていますが、危険物第4類である灯油をこぼした場合には火災の危険性が高まります。
消防法に違反すると罰則が科せられる場合があるので、忘れず最寄りの消防へ連絡してください。
道路法
道路法は交通の危険を防止し、道路に関する工事またはあらゆる行為を規制することを目的とした法律です。第43条によって、道路の構造または交通に支障を及ぼす危険性のある行為は禁止されています。
つまり灯油を道路にこぼすことは、交通の危険を生じさせる可能性があり、道路法違反となる可能性があるのです。
もし不安に思うことがあれば、専門業者、もしくは消防にすぐにご連絡ください。

一般道路で漏れた灯油がもたらす周囲への悪影響
一般道路に灯油が漏れ出てしまった場合、以下のような悪影響が考えられます。
水質汚染

例えば水質汚染は代表的な弊害となり得ます。灯油が雨水溝を通じて河川や湖に流れ込むと、水面に油膜を形成します。
この油膜は水中の酸素供給を妨げ、魚やその他の水生生物の呼吸を困難にしてしまいます。その結果として、水生生物の大量死や生態系のバランスの崩壊につながる可能性があるのです。
また、もし地下水が汚染されると、井戸水や湧き水などの飲料水源が使用できなくなる恐れがあります。地下水を浄化するのは非常に困難なことであり、多くの時間を費やします。
土壌汚染
灯油による土壌汚染は、植物や土壌生物に深刻な影響を与えます。例えば灯油で汚染された土壌では、植物の根が必要な水分や栄養分を吸収しにくくなり、その結果として植物の成長が阻害・枯死する可能性もあるのです。
長期的な目線から見ても、土壌が汚染されることによって微生物(バクテリアや菌類)の活動が低下して肥沃度が落ちてしまいます。
大気汚染
灯油の揮発性成分は、大気中に放出されて空気を汚染します。灯油が蒸発すると、有害な炭化水素が大気中に放出されていきます。これによる危険性は2つです。
これらの有害物質がスモッグの形成を促進し、大気質を悪化させる可能性があること、また灯油特有の悪臭が周辺地域に広がってしまうことで、悪臭問題にまで発展してしまうことです。
一般道路で大量に灯油が漏れた場合

もし道路で少量とは呼べない大量の灯油が漏れた場合、迅速かつ適切な対応が求められます。例えば下記が挙げられます。
関係各所への連絡
まず忘れてはいけないのが、警察に連絡し、事故の発生と状況を報告することです。その後警察は必要に応じて交通規制を行い、現場の安全確保に努めます。
次に、消防への連絡も不可欠です。灯油は引火性の高い物質で、火災が起きる可能性は否めません。消防に当事者から現場の状況を詳しく伝え、適切な指示を仰ぐことが重要です。
また道路管理者への連絡も必要です。灯油漏れが道路を損傷させたり、交通の妨げになったりする可能性があるためです。道路管理者は国土交通省・都道府県・市町村など、道路の種類によって異なるので、まずは消防・警察へ連絡して問い合わせてみてください。
最後に、地方自治体の環境保全担当部署への連絡も忘れずに行いましょう。灯油漏れは環境汚染を引き起こす可能性があるため、環境保全の観点から適切な対応が必要となります。
初動対応
初動として、充分な安全を確保した上、可能な範囲で灯油漏れに対して以下の対応を行いましょう。
まず周囲の人々に灯油漏れがあったことを知らせて二次被害を予防し、吸着マット等で灯油の拡散防止を行ってください。ちなみに、後々のために、灯油漏れの状況(場所、量、時間など)を写真や動画で記録しておくと役に立ちます。
大量に灯油が漏れた場合の対処法は以下のページでも解説しています。併せてご覧ください。
事故処理後の経済的負担
一般道路で灯油を漏洩させる事故が発生すると、その処理にかかる経済的な負担は小さくありません。さらに、負担の内容や範囲は事故の当事者が個人である場合と法人である場合で異なります。
個人の場合

個人が灯油漏洩事故を起こした場合、事故の規模や状況によって負担が異なります。特に、自動車で灯油を輸送中に漏洩したケースや、灯油タンクの誤操作が原因の場合などが該当します。
道路表面の洗浄だけでなく、灯油が浸透したアスファルトの撤去・交換が必要になる場合もあります。清掃費用は数万円から数十万円に達することが一般的で、大規模な漏洩ではさらに高額になります。ほかにも第三者への損害賠償や罰則、行政指導が追加されることもあります。
事業所に所属する従業員の場合

法人が灯油漏洩事故を起こした場合、個人よりも重い責任と負担が課されることがあります。法人としての社会的信用や法的責任が問われるため、負担の範囲が広がる傾向があります。
法人が起こした事故の場合、清掃費用や環境修復費用の請求額は、より厳しく精査されることが多いです。特に、商業用の大型タンクローリーや事業所の灯油設備が原因の場合、処理費用が数百万円から数千万円に達する可能性があります。また、周辺住民への説明や追加調査が必要となる場合、それにかかる費用も企業側が負担する必要があります。
いずれの場合も、事故を未然に防ぐための日常的な管理が必須といえます。
少量の灯油だった場合の対応方法
たとえ量が少なくとも、大気に溶け込んでしまう灯油は、放置するとアスファルトに油染みが残ったり臭いが周囲に拡散したりする可能性があります。少量であっても、可能な範囲で除去作業を行いましょう。ただし作業中はゴム手袋やマスクを着用し、皮膚や呼吸器への灯油の影響を避けるようにしてください。
まずは吸着材を使って灯油を吸い取り、ビニール袋などに入れて密閉し可燃ごみとして処分します。灯油を吸収した後、中性洗剤を薄めた水で洗い流します。洗浄後も臭いが残る場合は、重曹を水で溶かした重曹水を染み込ませた布で拭き取りましょう。
しかし、素人判断では灯油を適切に除去することは難しいため、迷わず消防や専門業者へ連絡することを忘れないでください。
まとめ|少量でも大量でも、灯油漏れには安全な対処を

灯油漏れは、その量に関わらず適切な対応が必要です。まず火気厳禁を徹底し、漏れの拡大を防ぐことが重要です。少量の場合でも吸着材を使って素早く拭き取り、密閉容器に保管しましょう。
大量の漏れの際は、ご自身の安全を確保しつつ、速やかに消防や警察に通報します。環境への影響を考慮し、排水溝への流出を防ぐことも大切です。関係機関に適切な廃棄方法を確認し、法令に従って処分してください。
安全第一で冷静な対応を心がけつつ、灯油漏れ対策には専門業者の助言を求めましょう。