工場や事業所で灯油を扱う際、「どのくらいの量まで保管していいのか」「特別な届け出は必要なのか」と悩む方は多いのではないでしょうか。実は灯油は、消防法で「危険物」に分類される物質です。誤った保管方法をとると、火災・爆発事故につながるおそれがあります。
この記事では、工場で灯油を安全に保管するために知っておくべき消防法上のルール・容量制限・保管場所の基準をわかりやすく解説します。
灯油は「危険物第四類」に分類される
まず理解しておきたいのは、灯油は「危険物第4類 第2石油類」にあたるという点です。消防法では、引火性液体(火がつきやすい液体)を「危険物第4類」として規定しており、その中でも灯油は次のように分類されています。
| 区分 | 名称 | 引火点 | 指定数量 |
| 第4類 | 第2石油類(非水溶性) | 21℃以上70℃未満 | 1,000L |
つまり、灯油を1,000L以上保管すると「危険物の貯蔵所」とみなされ、消防法上の許可が必要になります。
工場で灯油を保管できる量と届出の基準
工場などの事業所で灯油を保管する場合、保管量によって必要な手続きが変わります。
| 保管量 | 区分 | 必要な手続き |
| 160L未満 | 少量危険物 | 特別な届出不要(ただし安全対策は必須) |
| 160L〜1,000L未満 | 少量危険物(中量保管) | 自治体への届出が必要な場合あり |
| 1,000L以上 | 危険物貯蔵所 | 消防署の許可が必要(設置・構造基準を満たすこと) |
160L(指定数量の1/6)を超えると、自治体によっては「少量危険物取扱い施設」として届出が義務付けられる場合があります。1,000Lを超える場合は必ず消防署の許可が必要となり、構造基準・防火壁などの設置が求められます。
保管場所の安全基準と注意点
灯油は可燃性が高く、直射日光や高温を避けた場所での保管が原則です。また、工場では周囲に可燃物や熱源が多いため、次のような安全対策が求められます。
1. 保管容器は金属または指定容器を使用
ポリタンクなどを使用する場合は、消防法で認められた容器(赤色の灯油用ポリ容器など)を選びましょう。変形・ひび割れ・劣化した容器は使用禁止です。
2. 揮発防止のために密閉保管を徹底
キャップをしっかり閉めることで、灯油の蒸気(可燃性ガス)が漏れるのを防止できます。
換気の悪い場所では、ガスが充満し引火するおそれがあるため注意が必要です。
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3. 火気・熱源からの距離を確保
溶接機・ヒーター・ストーブなどの火気から少なくとも1.5m以上離すのが安全です。照明器具や配線の熱にも注意しましょう。
4. 転倒・漏洩防止の固定
タンクやポリ缶はラックや柵で固定し、地震や風で倒れないようにします。受け皿(ドレンパン)を設置すると、万一の漏れにも対応できます。
消防署への届け出・許可の流れ
灯油を多量に保管する場合は、事前に消防署への相談・申請が必要です。
- 保管計画を立てる(設置場所・容量・容器・防火設備など)
- 消防署へ事前相談(地域によって基準や必要書類が異なります)
- 設置許可申請書を提出
- 現地審査・検査
- 許可証の交付後に運用開始
なお、無許可で指定数量以上を保管すると、消防法違反として罰則(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)が科される場合があります。
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灯油を安全に保管するためのポイントまとめ
- 灯油は危険物第4類・第2石油類に分類される
- 1,000L以上は消防署の許可が必要
- 160L超〜1,000L未満も自治体によっては届出が必要
- 直射日光・火気を避け、密閉容器で保管
- 無許可保管は罰則対象となる可能性あり
よくある質問(FAQ)
Q1. 灯油をポリタンクで屋外に置いても大丈夫?
→屋外でも保管可能ですが、直射日光・雨・雪を避ける場所を選び、防火壁・日除けカバーの設置がおすすめです。
Q2. 工場で使う灯油タンクの設置は誰に相談すればいい?
→必ず地域の消防署または専門業者に相談しましょう。構造基準や容量によって設計が変わります。
Q3. 少量危険物(160L未満)なら自由に保管してよい?
→法的には届出不要ですが、火気厳禁・密閉・転倒防止などの安全対策は義務に準じて行う必要があります。
まとめ
工場での灯油保管は、量と場所によって必要な手続きが大きく変わります。1,000L以上を扱う場合は「危険物貯蔵所」としての許可が必須。 少量でも安全基準を守らなければ、重大事故につながりかねません。
日常的に灯油を使用する工場や事業所では、消防法のルールを正しく理解し、安全な設備・管理体制を整えることが何より大切です。

