飲食店、整備工場、製造業など、さまざまな現場で発生する「廃油」。「とりあえずドラム缶に貯めている」「空いたペール缶に入れて置いている」――そんな対応をしていると、知らぬ間に消防法違反になっている可能性があります。
廃油は「危険物」に該当するケースが多く、保管方法・量・処分の仕方によっては届け出や専用設備が必要になります。本記事では、消防法における廃油の分類や義務、処分方法の正しい知識をわかりやすく整理します。
廃油は「消防法上の危険物」に該当するのか?
まずは、廃油は「消防法上の危険物」に該当するのかについて触れていきましょう。
廃油は「第4類危険物(引火性液体)」に分類される可能性がある
消防法では、「引火点が40℃未満の廃油」は「危険物第4類 第1石油類」または「第2石油類」などに該当します。使用済みエンジンオイルや廃食用油なども、成分や性状によっては危険物と見なされ、保管や運搬に規制が及びます。
危険物に該当するかどうかは“性状”で判断される
廃油が危険物に該当するかは、以下のような性状に基づいて判断されます。
分類 | 引火点 | 消防法上の区分例 |
第1石油類 | 21℃未満 | 揮発性が高く、ガソリン類 |
第2石油類 | 21〜70℃ | 一般的な廃潤滑油など |
第3石油類 | 70〜200℃ | 比較的安定な廃油 |
引火点が70℃以上であっても、性状が不明な場合は危険物として扱うのが安全です。
消防法に基づく廃油の保管・運搬ルール
消防法に基づく廃油の保管・運搬には法的に定められた規定があります。以下でその2点について説明します。
保管には「指定数量」と「施設基準」がある
廃油が危険物と判断された場合、保管量が一定を超えると消防署への届出または許可が必要です。
危険物の区分 | 指定数量の目安 | 対応義務 |
第1石油類 | 200L | 届出/許可、構造基準の遵守が必要 |
第2石油類 | 1,000L | 届出・設備基準(タンク・保管庫) |
第3石油類 | 2,000L | 原則として届出が必要 |
また、屋外保管や一定の量を超える場合は、耐火構造の倉庫・油漏れ防止設備・消火設備の設置などが義務となります。
運搬時のポイントと注意事項
廃油の運搬においても、以下の点に注意が必要です。
- 消防法に適合した容器(UNマーク・危険物用ドラムなど)を使用
- 容器は密閉し、漏れや破損を防ぐ
- 必要に応じて、危険物運搬車の表示を行う
※ 一定量を超える場合、危険物運搬車としての許可・標識が必要になることがあります。
廃油の適切な処分方法とは?
廃油を処分するにも、専門的な知識が必要です。むやみに捨ててしまうと方に触れるリスクがあるため、以下で説明します。
「産業廃棄物」としての処理義務も発生
廃油は、消防法だけでなく廃棄物処理法の観点でも「産業廃棄物」に分類されるケースがほとんどです。そのため、処分には以下の対応が求められます。
- 産業廃棄物処理業者との契約(マニフェスト発行)
- 再利用(再生油化)・焼却処理・中間処理などの適正処理
廃油処理の違法行為(無届け焼却・不法投棄など)は、法人で最大1億円の罰金、代表者個人にも罰則が科されることがあります。
違反するとどうなる?罰則と行政指導のリスク
廃油を適切に扱わないことで発生するリスクは以下の通りです。
- 消防署からの指導・是正命令、最悪の場合は営業停止命令
- 重大火災や漏洩事故の際、刑事責任や損害賠償の発生
- 悪質と判断されると、罰金・禁錮刑の対象にも
「知らなかった」では済まされないのが、危険物の世界。廃油の取扱いが複数の法令にまたがることもあり、定期的な点検・職員教育・マニュアル整備が求められます。
まとめ|廃油の扱いは“法令対応×安全管理”の両立がカギ
廃油は、性状によっては消防法の「危険物」かつ廃棄物処理法の「産業廃棄物」にも該当する、非常に扱いの難しい存在です。だからこそ、法的義務だけでなく、事故を未然に防ぐための安全管理体制の整備が必要です。
特に、廃油を取り扱う工場や店舗では以下の対応が重要です。
- 性状を確認し、必要に応じて危険物扱いとする
- 指定数量や保管方法を守り、届け出を行う
- 専門業者と連携し、法に則った処理・処分を徹底する
「知らずに違法」「なんとなく放置」を避け、責任ある事業者としての対応を心がけましょう。